空・殻・核 (くうからかく)

クロノスとカイロスの狭間を転がる

過去記事の目次

しばらく多忙を理由に更新していませんので、ちょっとこのブログの過去記事の目次を作成してみました。よろしかったら、ご覧下さい。

 

1.何もないところから書き始めてみるhttps://hewhomeyouit.hatenablog.com/entry/2019/01/31/103136

2.2019年はどんな年か?
https://hewhomeyouit.hatenablog.com/entry/2019/02/01/062131

3.コロガリズムとは?
https://hewhomeyouit.hatenablog.com/entry/2019/02/01/233508

4.オイラー
https://hewhomeyouit.hatenablog.com/entry/2019/02/03/014751

5.宇宙と世界、そして、精神と生命と物質
https://hewhomeyouit.hatenablog.com/entry/2019/02/04/111435

6.『2001年宇宙の旅』と人間の意識
https://hewhomeyouit.hatenablog.com/entry/2019/02/05/101843

7.アポロニウスの円
https://hewhomeyouit.hatenablog.com/entry/2019/02/05/165203

8.二項展開とパスカルの三角形
https://hewhomeyouit.hatenablog.com/entry/2019/02/13/134528

9.ソ・ラを超えて
https://hewhomeyouit.hatenablog.com/entry/2019/02/16/114156

10.地球と太陽と月の回転
https://hewhomeyouit.hatenablog.com/entry/2019/02/26/155848

11.太陽系の各惑星の自転・公転・会合周期、まずは水星から
https://hewhomeyouit.hatenablog.com/entry/2019/03/02/220726

12.水星の少年、金星の少女
https://hewhomeyouit.hatenablog.com/entry/2019/03/05/004539

13.惑星の公転軌道と原子核プラトン立体モデル
https://hewhomeyouit.hatenablog.com/entry/2019/03/13/150345

14.平成と令和にまつわる神聖なる数遊び
https://hewhomeyouit.hatenablog.com/entry/2019/04/01/235650

15.三角形の内外の点と線と内分・外分
https://hewhomeyouit.hatenablog.com/entry/2019/04/02/083057

16.円周率
https://hewhomeyouit.hatenablog.com/entry/2019/04/08/180350

17.四苦八苦する黄金比白銀比
https://hewhomeyouit.hatenablog.com/entry/2019/04/08/224119

18.四元素説から始まる四値についての試論
https://hewhomeyouit.hatenablog.com/entry/2019/04/22/165325

19.自然な数の拡張と複素数
https://hewhomeyouit.hatenablog.com/entry/2019/04/25/211538

19.自然な数の拡張と複素数

私たち人間にとって最も親しみのある数と言えば、1,2,3,…という自然数である。そもそも数は、人間がある対象を1つの単位(ユニット)として「1」として閉じて「認識」することから始まり、それと同一視するところから「2」「3」と順に閉じて認識していくことこそ「数える」という行為である。

 

人間はこの数同士を関係づける行為として「計算する」ということを行ってきた。最も基本的な計算は「足し算」(加法)だ。自然数同士の足し算の結果も自然数になる。人間は行ったら帰るという行き来というか往復というセンスを持っていて、足したら、今度は引いて戻ってくる計算を行いたくなる。これが「引き算」(減法)という足し算の逆計算だが、自然数同士の引き算は必ずしも計算結果は自然数にならないことがある。例えば、m-nという引き算において、引かれる数mと引く数nが同じ場合は計算結果は0(ゼロ)になるし、引かれる数mより引く数nの方が大きいと計算結果は自然数に-符号を付けた数になっる。自然数に-符号を付けた数を負の整数と呼ぶ。一方自然数は、正の整数と呼ぶ。この正の整数、0、負の整数を合わせて、「整数」と呼ぶ。

 

この整数同士は足し算(加法)や引き算(減法)や掛け算(乗法)を行っても整数になる。しかし、整数を(0を除く)整数で割り算(除法)をしても、割り切れない場合は整数にならない。割り切れない場合は分数の形で書ける。このようなものは整数も含めて「有理数」と呼ぶ。ここまで、数の集合を、自然数→整数→有理数まで拡張したが、ここまでだと「連続性」を有する形である「直線」上の点を対応付けることはできない。例えば、同じ数同士を掛け合わせて2となる数といった数は有理数にはならない。このような数を「無理数」と呼ぶ。有理数無理数を合わせて、「実数」と呼ぶ。実数は実数同士で足し算・引き算・掛け算・割り算という加減乗除の計算(四則演算)を行っても実数になる。

 

数学では、このような「数」と同様の特性を他の形式の元を持つ集合にも適用して、数と同様の扱いをしたいと考える。要するに、数と全く同じではないが、数と似たような計算ができる集合というものを考える。これが「群」「環」「体」といった代数学的な構造を持つ集合である。このうち、最も基本的なものが「群」である。群の詳しい定義はここでは述べない。

 

以上までの数の集合について、以下にざっくりまとめてみる。

 

自然数…加法・乗法ができる。ただし、加法における単位元・逆元や、乗法における逆元は持てない。また、自然数の指数による冪(累乗)も計算できるが、逆元は持てない。

{1, 2, 3, ……}

 

・整数……加法・乗法・減法ができる。「零元」(加法における単位元)として「0」、「反数」(加法における逆元)として「負の整数」を持てる。→加法群という「群」として閉じる。また、自然数の指数による冪(累乗)も計算できるが、逆元は持てない。直線上では「離散」性を持つ。

{…-3, -2, -1, 0, 1, 2, 3, ……}

 

有理数…加法・乗法・減法・除法(0による除法は除く)ができる。「逆数」(加法における逆元)を持てる。→加法群・乗法群として閉じる。つまり、「環」として閉じる。また、整数の指数による冪(累乗)も計算できる。直線上では「稠密」性を持つ。

{…-3, -2, -1, 0, 1, 2, 3, …, 1/2, 2/3, -3/4, -5/2, …}

 

・実数……加法・乗法・減法・除法(0による除法は除く)ができる。

冪(累乗)の逆演算ができ、「冪根」(冪(累乗)における逆元)を持てる。「無理数」として、平方根や立方根などの「冪根」以外にも、円周率πや、ネイピア数自然対数の底)eなどを持てる。また、実数の指数による冪(累乗)も計算できる。直線上では「連続」性を持つ。

{…-3, -2, -1, 0, 1, 2, 3, …, 1/2, 2/3, -3/4, -5/2, …, √2, e,π, …}

 

既知の数(定数)と未知の数(変数)の掛け算もまた変数となる。この変数はそのとる値の範囲の分だけ「自由」度を持つ。この変数がある定数と一致するという「拘束」条件を与える。こうすれば、特定の「問い」が成り立つ。この「問い」に対する「答え」を求める。これが「方程式」というものである。

 

最も簡単な方程式は、以下の1次方程式である。

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図19-1 1次方程式

この定数係数a,bが有理数までなら、この解は必ず有理数であり、この定数係数a,bが実数までなら、この解は必ず実数である。

 

次に、以下のように2次方程式というものもある。

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図19-2 2次方程式

これを拡張して、n次方程式を考えることができる。

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図19-3 n次方程式

普通、n次方程式の基本定理として(重複解を含めて)n個の解を持つ。つまり、2次方程式は(重複解を含めて)2個の解を持つということだ。ところが、解の範囲が実数までだと、解を2個持たない場合が存在する。

 

例えば、最も簡単な2次方程式

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図19-4 -1の平方根を求める2次方程式

といういわゆる-1の平方根を求める方程式は、実数の範囲では解なしとなる。ここで、無理やり数の集合の範囲を、実数から拡張して「負の実数の平方根」を許容して「虚数」というものを認めると、解を2個持つようになる。この-1の平方根の正の方を「虚数単位」と呼び、iと書く。

つまり、

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図19-5 -1の平方根

と定義する。「負の実数の平方根」を、特に「純虚数」と呼ぶ。

 

ここで、「負の実数の平方根」を許容するという行為こそ、数に具体的なものを求めるだけでなく、より抽象度の高い構造を持ったものを「数」として認めたことになる。この結果、数は感覚的に認識できる存在から、思考的な存在として認識できるレベルにまでなったのである。

 

こうして、2次方程式は必ず解をもち、実数でない解は、

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図19-6 複素数の形式

という形式で書ける数となる。ただし、αとβは実数である。このαが実数部分であり、βiが虚数部分である、この実数と虚数を+記号で結んだものを数と認め、「複素数」と呼ぶ。こうして、複素数というものが数として導入された。以上で、複素数がこれまでの実数までの数の拡張とはちょっと違った形式のものであることがわかった。

 

よく考えてみれば、自然数→整数→有理数という拡張は、加減乗除という四則演算を成り立たせるための拡張であった。そして、1次方程式の解はここまでの数の拡張で求まる。次の実数への拡張は、平方根を求めたりする、2次方程式の解を求めることとも関係するが、それでは完全ではなく、直線上の点と対応付ける連続性を要請すると、円周率πやネイピア数eといった「超越数」をも含めるようになる。超越数とは、普通の(代数的な)方程式の解ではないような実数である。2つの実数同士は、大小関係を比較できる。一般に、実数は、整数、有限小数循環小数、循環しない小数のいずれかで表現できる。

 

一方、複素数は大小関係を比較しようのない数であり、長い間、自然界の何らかの存在と直接対応付けるようなものはないと考えられてきた。ところが、実際には、波動の形式的な解として用いられ、電磁気学にも応用された。だが、これらはまだ数学的計算上便利な形式的な解として用いられるのがせいぜいであった。ところが、量子力学という分野が立ち上がってきたとき、量子という存在自体が、それが存在する条件として、複素数以上の構造を持つ概念が必要とされるようになった。それは量子力学における物理量が単なる実数に留まらず、少なくとも複素数以上の構造を要する、ある意味では実在的な量の根拠として紐づけられるものであることがわかったわけである。 

18.四元素説から始まる四値についての試論

少し数学拠りの話題ばかりが続いたので、この辺で必ずしもそればかりじゃない話題についても触れておこう。

 

私たちは、四次元時空といった物理などの学問分野でなくても、ふだんから、四季(春夏秋冬)を味わうだとか四方(東西南北)を意識するだとか。あるいは、四コマ漫画だとか四字熟語だとか文章の起承転結だとか世界の四大文明だとか、日常的に事あるごとに四値というものに出くわす。ひょっとしたら、私たち人間にとっては、何かを認識するときには、この四値的な認識のスタイルの方が記憶に馴染んだりするものがあるのかもしれない。

 

そこで、私自身がちょっと気になる四値的なものを、ここでは取り上げてみることにする。

 

まずは古代から支持されてきた「四元素説」というものを取り上げる。

 

四元素とは、この世界の物質は、火・空気(もしくは風)・水・土という四つの元素から構成されるとする概念であり、古代ギリシア・ローマ、イスラーム世界、および18~19世紀頃までのヨーロッパで支持され、古代インドにも同様の考え方が見られた。

 

古代ギリシアの自然哲学者エンペドクレス(B.C.490年~B.C.430年頃)は、この世界の万物の根源(アルケー)は「火」「空気」(風)「水」「土」(地)という4つの根(リゾーマタ)から構成され、それらを結合する「愛」(ピリア)と分離させる「憎」(ネイコス)により集合離散するとする説を唱えた。

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図18-1 四元素説

この古代における「この世界が何で出来ているか」という観点自体は、現在では、科学的には素粒子物理学が踏襲していると言えるが、この世界を構成するものは、物質粒子(フェルミオン)と力の媒介粒子(ボソン)という2種類の量子があって、大きくは、前者は電荷的にはuクォークなどの正電荷クォーク、dクォークなどの負電荷クォーク、電子などの負電荷レプトン、電子ニュートリノなどの電荷ゼロのレプトンの四種類があり、後者は、光子(フォトン)、ウィークボソングルーオン重力子(グラビトン)という四つの力を媒介する粒子が存在している、と言えば、物質粒子と力の媒介粒子に分かれたものの、いまだ四元素説の香りは残しているとも言えるのではないだろうか。

 

次に、「三平方の定理」で有名な古代ギリシアの賢人ピュタゴラス(B.C.582~B.C496年)であるが、彼は「万物は数である」と唱え、一種の宗教結社の色彩も帯びた「ピュタゴラス教団」というものを結成した。その中で、彼は、数学的学問を、数か量か、静止か運動かという区分によって、数論・音階論・幾何学天文学の四つの分野に分類し、ピュタゴラスの「四科」(クワァドリヴィウム)と呼ばれた。このことはプロクロスの『註釈』に書かれている。そもそも「数学」の英単語である「マセマティクス」の語源は古代ギリシア語の「マテーマタ」にあると言われ、「学ぶ」を意味する動詞から派生した「マテーマ」という単語の複数形であり、「学ばれるべきもの」を意味していた。ピュタゴラスは、このマテーマに、四つの区分を施したのである。当時は学問的なものが上位に位置付けられ、これら四つの学問的分野は、計算術・大衆音楽・測量術・航海術という実用的な技術よりも上位の階層に置かれた。

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図18-2 古代ギリシアの「ピュタゴラス学派の四科」(クワァドリヴィウム)

ところで、昔、キトラ古墳で発見された天井壁画の天文図には、「四神」と呼ばれる中国由来の四種類の幻獣が描かれている。つまり、四方位には、東の青龍、南の朱雀、西の白虎、北の玄武が配置されている。

 

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図18-3 天文図を囲む四神

                              (https://trippiece.com/plans/17984/view/ より)

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図18-4 四神

                  (http://kodaikyou.blogspot.com/2018/03/blog-post_8.html より)

この四神として登場する青龍・白虎・朱雀・玄武に冠している「青」「白」「赤」(=朱)「黒」(=玄)の四色だが、面白いことに、日本語において、「い」を付けるだけでそのまま形容詞となる色になっていて、これ以外に、単に「い」を付けるだけでそのまま形容詞となるような色はない(例えば、「黄色い」などは「黄い」とは言わない)。この「青」「白」「赤」「黒」の四色は、日本語の起源においても古いと言われ、「白」は「濃」、「青」は「淡」で濃淡を表しており、「赤」は「明」、「黒」は「暗」で明暗を表していると言われ、うまい具合に、西から東の方向に濃淡、南から北の方向に明暗を表して、まるで光(もしくは色)のグラデーションを表現しているとも思える。

 

さて、もう一つ、日本人に馴染みの四値と言えば、よく性格判断だとか占いに登場するO型、A型、B型、AB型というABO式血液型である。ヒトの場合、型を決定する対立遺伝子にはA、B、Oの3種、遺伝子型にはAA、BB、AB、AO、BO、OOの6種があるが、AA・AOがA型、BB・BOがB型、ABがAB型、OOがO型となる。世界の人種別・民族別の血液型の割合としては、大体、O型:45%、A型:40%、B型:11%、AB型:4%ぐらいだと言われる。これらO型、A型、B型、AB型の血液型の人種的・民族的な起源は、次のように言われている。

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図18-5 世界の血液型の割合

                                      (https://uranaru.jp/topic/1004729 より)

 

(1)O型…紀元前40,000年頃、アフリカに出現した狩猟民族。主食が肉。

    消化酵素が強く、消化器官が短い。体には肉類が合い、穀類や野菜が

    合わない。免疫力が一番強い。

 (2)A型…紀元前25,000年~15,000年頃、アジアに出現した農耕民族。

    主食が米・小麦などの穀物。消化酵素が弱く、消化器官が長い。

    体には穀類や野菜が合い、肉類が合わない。免疫力は3番目に強い。

(3)B型…紀元前15,000年頃、ヒマラヤに出現した牧畜民族。

    主食がチーズやハムなどの保存食。雑食。免疫力は2番目に強い。

(4)AB型…2,000年前頃、ヨーロッパの都市部で出現した農耕民族と牧畜民族の

     混血種。穀物も保存食も食べる雑食。免疫力が一番弱い。

 

(参考サイト:A型、B型、O型、AB型の歴史と、それぞれの血液型の特徴

(http://daresore.hatenablog.jp/entry/2017/11/29/A%E5%9E%8B%E3%80%81B%E5%9E%8B%E3%80%81O%E5%9E%8B%E3%80%81AB%E5%9E%8B%E3%81%AE%E6%AD%B4%E5%8F%B2%E3%81%A8%E3%80%81%E3%81%9D%E3%82%8C%E3%81%9E%E3%82%8C%E3%81%AE%E8%A1%80%E6%B6%B2%E5%9E%8B%E3%81%AE))

 

このように、四値的なものは挙げればキリがないほど、いろんなジャンルのいろんなものがある。他にも、すぐに思いつくものを挙げれば、例えば、有機物を構成する元素と言えば、水素(H)、炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)の4種類だし、DNAを構成する核酸塩基と言えば、アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、シトシン(C)という4種類だし、数学においては複素数の拡張版とも言える「四元数」(あるいは「ハミルトン数」)というものもある。

17.四苦八苦する黄金比と白銀比

私たちにとっては「比」と聞くと、前回の円周率よりも、「黄金比」や「白銀比」といったデザインでよく用いられる比の方が、むしろ「比」という言葉としては実はポピュラーな気もする。

 

さて、前回「31」が五七五七七の句をなす「短歌」の文字数の話をしたが、この五と七を「比」にすると、5:7となるわけだが、これは、5:7=1:1.4≒1:√2というように、正方形(正四角形)の一辺と対角線の長さの比の近似値になっていて、この比は「白銀比」と呼ばれる。同様に、5:8という比もよく用いられるが、こちらの方は、5:8=1:1.6≒1:(√5+1)/2というように、正五角形の一辺と対角線の長さの比の近似値になっていて、この比は「黄金比」と呼ばれる。この黄金比(√5+1)/2は、しばしばギリシア文字の「Φ」で書かれる。

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図17-1 黄金比白銀比と正多角形

ちなみに、長方形の短辺と長辺の比が黄金比1:Φになるものを「黄金長方形」、白銀比1:√2になるものを「白銀長方形」と呼ぶ。黄金長方形を黄金比で次々に正方形分割すると黄金螺旋を描くことができる。また、白銀長方形であるB0用紙を白銀比で分割していくと、B1,B2,B3,B4,B5,…の用紙を順に切り出すことができる。

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図17-2 黄金分割と白銀分割

    (http://ggdesign.blog48.fc2.com/blog-entry-106.html より)

 

さて、ここで黄金比白銀比を本来の定義による方程式から求めておこう。

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図17-3 黄金比白銀比の求め方

「四苦八苦する」と言えばちょっとした駄洒落になるが、この「49」と「89」を逆数にしたもの、つまり、「1/49」と「1/89」はそれぞれ白銀比黄金比と関係する。より具体的に言えば、1/49の方は、白銀比である√2の2乗である2の累乗が順に小数桁に現れ、1/89の方は、黄金比の元とも言えるフィボナッチ数列が小数桁に順に現れる。ちなみに、フィボナッチ数列とは初項1、第2項1で、第(n+2)項=第n項+第(n+1)項で与えられる数列のことで、n→∞のときの第n項/第(n+1)項の極限値黄金比に近づく。

 

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図17-4 黄金比白銀比黄金比白銀比と89分1のと49分の1

ついでに、黄金比白銀比を連分数形式で表示しておく。

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図17-5 黄金比白銀比の連分数表示

 

16.円周率

「比」と聞いて、最もポピュラーなものは「円周率」ではないだろうか。円周率とは、円の直径の長さに対する円周の長さの割合のことで、要するに、(円の直径の長さ)÷(円周の長さ)の値のことである。これは円の大きさに依らず一定の値を取る。円周率は、記号としてはギリシア文字の「π」で表し、私たちがよく馴染んでいる1次方程式や2次方程式といった代数方程式の解にはならない無理数であり、そのような数は「超越数」と呼ばれる。したがって、円周率πは、循環しない小数で表されるが、学校でもよく用いられる近似値は、小数第2位までの値で3.14である。

 

さて、先日3月にこんなニュースが流れた。ニュースの記事を引用させて頂く。

 

@niftyニュース】Googleでエンジニアとして働く岩尾エマはるかさんが円周率計算のギネス世界記録樹立

 

Googleでエンジニアとして働く岩尾エマはるかさんが、3.14で始まる円周率を小数点以下約31兆4159億2653万5897桁まで計算し、3月14日にギネス世界記録として認定されました。これは、3月14日の円周率の日に合わせて、Googleクラウド・インフラストラクチャの力を証明しようと挑戦した結果となります。

 

円周率の世界記録を出しました! 31兆桁です!

(2019年03月22日 13時30分 ガジェット通信)

(https://news.nifty.com/topics/12259/190322326527/ より)

 

円周率の近似値として、古くから伝えられている分数形式ものとしては、22/7と355/133が有名で、前者は3.1428…で、小数第2位まで、後者は3.14159292…で、小数第4位までが正しい。

 

このような円周率の近似値計算は、古代バビロニアの時代から円に内接・外接する多角形に基づく近似という幾何学的手法によって行われ、14世紀のインドや15世紀のペルシャ辺りを皮切りに、級数展開を利用した近似という解析学的な手法が用いられるようになり始めた。20世紀後半になると、いよいよ近似計算は、個人のレベルではなく、計算機による計算のレベルになってきており、1989年には5億桁前後から10億桁前後のレベルになり、1997年には500億桁以上、1999年には2000億桁以上となり、21世紀に入ると、1兆桁を超えて、ついに、今年平成31年の「円周率の日」である3月14日には、実に、31兆4159億以上という、円周率の10兆倍にも届く桁数の近似値をはじき出すことに成功した。既に、円周率の近似計算にロマンを感じた時代はもはや完全に終焉したと言える。

 

ここで円周率を具体的に小数点以下39桁まで表示すると、

π=3.141592653589793238462643383279502884197…

となる。円周率の有名な覚え方としては、小数点以下20桁までなら、「身一つ世一つ生くに無意味違約無く身文や読む」(みひとつよひとついくにむいみいやくなくみふみやよむ)、小数点以下39桁までなら、「産医師異国に向う産後厄無く産婦御社に虫散々闇に鳴く後礼には早よ行くな」(さんいしいこくにむこうさんごやくなくさんぷみやしろにむしさんざんやみになくごれいにははよいくな)といったものがある。

 

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図16-1 円周率

ところで、今年の4月30日にはいよいよ「平成」という元号が終わる。平成最後の年は「31」年。「31」はうまい具合に、円周率πを3乗した値、つまり、πを3回掛けた値にかなり近似する。このπの3乗という値は、直径1の円を直線上に転がしたときの1周分を一辺とする立方体の体積になる。またこの「31」という数は、日本人に比較的身近なところでは、五七五七七の句をなす「短歌」の文字数でもある。そう言えば、平成の次の元号である「令和」の典拠は、万葉集巻五の「梅花歌三十二首」の序文であったが、この「梅花歌三十二首」の「32」は「31」に+1した数というわけで、平成の年数「31」の後に来るということをうまく引き受けているのかもしれない。

15.三角形の内外の点と線と内分・外分

線分をまるでゴムのひものように考えると、それをm:nの比に分けるとき、その分割点をどこでつまんで実現するかによって「内分」か「外分」かが区別される。線分ABの内部のある点Pでつまむとき、線分ABをAP:PB=m:nの比に内分するという。一方、線分ABの延長線上のある点Qでつまむとき、線分ABをAQ:QB=m:nの比に外分するという。

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図15-1 内分と外分

こうした比というものは、古くから探究されてきた。例えば、ユークリッドの『原論』の中で、「線分を一点で分け、長い部分と短い部分との比が、全体と長い部分との比に等しくなるようにしたときの比」という「外中比」というものが出て来る。これは、近代以降に「黄金比」と呼ばれるようになったものである。

 

さて、ここで、三角形の内部と外部の1点と、3辺に対する内分・外分の比に興味深い関係がある。また、それと同様に、三角形の内部を横断する直線、あるいは横断せずに外部を通る直線と、3辺に対する内分・外分の比にも興味深い関係がある。前者は「チェバの定理」、後者は「メネラウスの定理」と呼ばれる。

 

これらは、言葉だけで説明するより、実際に図を描いた方が一目瞭然の図式である。まず、三角形△ABCの3頂点A,B,Cや3辺BC,CA,ABといった三角形の境界線上にない三角形の内部の1点をSとするとき、3頂点A,B,Cと点Sを結ぶ直線AS,BS,CSと対辺BC,CA,ABとの交点をP,Q,Rとする。このとき、この3つの点P,Q,RがBC,CA,ABをそれぞれBP:PC=a1:a2,CP:PA=b1:b2,AP:PB=c1:c2と内分するものとすれば、これら3辺の内分比の積はちょうど+1になる。同様に、三角形△ABCの外部にある1点をSとするとき、3頂点A,B,Cと点Sを結ぶ直線AS,BS,CSと対辺BC,CA,ABもしくはそれらの延長線との交点をP,Q,Rとする。このとき、この3つの点P,Q,RがBC,CA,ABもしくはそれらの延長線分をそれぞれBP:PC=a1:a2,CP:PA=b1:b2,AP:PB=c1:c2と内分もしくは外分するものとすれば、これら3辺の比の積はちょうど+1になる。なお、比の符号は、三角形の3辺を反時計回りに回る方向を正とし、そうでない方向を負として計算する。

 

チェバの定理

(1)三角形の内部に点がある場合

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図15-2 チェバの定理と内分・外分(1)

(2)三角形の外部に点がある場合

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図15-3 チェバの定理と内分・外分(2)

メネラウスの定理

(1)三角形の内部を直線が通る場合

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図15-4 メネラウスの定理と内分・外分(1)

(2)三角形の外部を直線が通る場合

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図15-5 メネラウスの定理と内分・外分(2)

以上、三角形の内外の1点と、3辺もしくは1辺と2辺の延長線分の関係が「チェバの定理」であるが、小難しく感じる人のためにもう少し日本語でまとめておく。

 

三角形の内部に1点があるとき、それと3頂点を結ぶ線分はそれぞれ3辺を内分するが、その3つの比の値の積は+1になる。三角形の外部に1点があるとき、それと3頂点を結ぶ線分は1辺を内分し、2辺を外分するが、その3つの比の値の積もまた+1になる。

 

続いて、三角形△ABCの内部を直線ℓが横断するとき、この直線が、3辺BC,CA,ABもしくはそれらの延長線分と交わる交点をP,Q,Rとする。このとき、この3つの点P,Q,RがBC,CA,ABをそれぞれBP:PC=a1:a2,CP:PA=b1:b2,AP:PB=c1:c2と分けるとすれば、これら3辺の内分比の積はちょうど-1になる。同様に、三角形△ABCの外部を直線ℓが通るときは、3辺BC,CA,ABの延長線分と交わる交点をP,Q,Rとすれば、この3つの点P,Q,RがBC,CA,ABをそれぞれBP:PC=a1:a2,CP:PA=b1:b2,AP:PB=c1:c2と分けるとすれば、これら3辺の外分比の積はちょうど-1になる。

 

以上、三角形の内外の直線と、2辺と1辺の延長線分もしくは3辺の延長線分の関係が「メネラウスの定理」であるが、これも小難しく感じる人のためにもう少し日本語でまとめておく。

 

三角形の内部を直線が横断するとき、その直線は2辺を内分し、残り1辺を外分するが、その3つの比の値の積は+1になる。また、三角形の外部を直線が通るときは、その直線と3辺の延長線分との交点で外分するが、その3つの比の値の積もまた-1になる。

 

最後に、きちんとまとめ直せば、以下の通りである。

【チェバの定理】

(1)三角形の内部に点がある場合

△ABCの内部に共点Sがある(AP,BQ,CRは共通の交点Sを持つ)

⇔BCを内分する点P,CAを内分する点Q,ABを内分する点R(3辺の内分点)

BP/PC・CQ/QA・AR/RB=+1

(2)三角形の外部に点がある

△ABCの外部に共点Sがある(AP,BQ,CRは共通の交点Sを持つ)

⇔BCを内分する点P,CAを外分する点Q,ABを外分する点R(1辺の内分点,2点の外分点)

BP/PC・CQ/QA・AR/RB=+1

 

メネラウスの定理】

(1)三角形の内部を直線が通る場合

△ABCの内部に共線ℓが通る(P,Q,Rは共通の直線ℓ上にある)

⇔BCを外分する点P,CAを内分する点Q,ABを内分する点R(2辺の内分点,1点の外分点)

BP/PC・CQ/QA・AR/RB=-1

(2)三角形の外部を直線が通る場合

△ABCの外部に共線ℓが通る(P,Q,Rは共通の直線ℓ上にある)

⇔BCを外分する点P,CAを外分する点Q,ABを外分する点R(3点の外分点)

BP/PC・CQ/QA・AR/RB=-1

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図15-6 チェバの定理とメネラウスの定理

https://blogs.yahoo.co.jp/ccomori/66445650.html の図の数式に符号をつけて修正)

 

14.平成と令和にまつわる神聖なる数遊び

元号が「令和」に決まった。

この「令和」の典拠は、国書である日本最古の和歌集「万葉集」(780年頃成立、全20巻)巻五にある雑歌の「梅花歌三十二首」の前につけられた「序」にある「于時初春令月 氣淑風和」(時に、初春の令月にして、気淑く風和ぎ)という語句だそうだ。ただ実際には、これと似た漢文が万葉集成立以前からある中国の中国の詩文集「文選」(530年頃成立)十五に収められた、後漢の文学者であり科学者の張衡(ちょうこう)が詠んだ「帰田賦」に「於是仲春令月 時和氣清」(これにおいて、仲春の令月、時は和し気は清む)とあるという。

なお、この万葉集巻五「梅花歌三十二首」の序の後に続く歌は、座の人々が四群に分かれて八首ずつ順に詠んだものであり、各々円座で回し詠みしたものとなっているそうだ。

(参考文献)
〇「令和」万葉集から由来をさらにさかのぼると?
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1904/01/news129.html

万葉集入門
http://manyou.plabot.michikusa.jp/manyousyu5_815jyo.html

この四群×八首=三十二首というのが数字オタクの私としては、非常に楽しい。
「32」と聞けば、素粒子物理学における万物の理論として注目される「超弦理論」に登場する対称性の一つであるSO(32)群を思い出す。SO(32)とは32次元回転群のことだが、この群の次元数が「498」である。なお、この「498」は3番目の完全数であり、「完全数」とは自分自身を除く正の約数の和に等しくなる自然数のことである。

さて、超弦理論には大きく、タイプⅠ,タイプⅡA,タイプⅡB,ヘテロSO(32),ヘテロE8×E8という5つの理論があり、ここに登場するゲージ群としてSO(32)やE8×E8があるわけである。SO(32)群とE8×E8群と同じ次元数であり、E8×E8群は2つのE8群の直積群であるが、この単独のE8群の次元数が「248」である。面白いことに、今回の新元号は「大化」から数えて「248」番目ということで、この数と一致する。

しかも、平成は「31」年で終わるが、直径1の円周の長さはπであり、これを3乗すると約「31」になる。つまり、直径1の円周を転がしてできる線分を1辺とする立方体の体積は約「31」になる。ちなみに、これを直径1ではなく半径1とすれば、半径1の円周の長さは2πであり、これを3乗すると約「248」になる。ちなみに、万葉集で詠まれている歌には、短歌・長歌・旋頭歌の3種があるが、短歌は五七五七七の「31」音である。

この「248」ですが、これは1930年に太陽系第9惑星として発見され、2006年のIAU(国際天文学会)総会で準惑星に降格した「冥王星」の公転周期が約「248」年である(また、万葉集が成立したとされる「780」年は、地球と火星の会合周期の年数と大体一致する)。

この新元号「令和」ですが、ひらがなで書けば「れいわ」、カタカナで書けば「レイワ」と読めて、ひらがなの「れ」は英大文字「R」の形に似ており、カタカナの「レ」は英大文字「L」の形に似ている。

ちょっといろいろと脱線しすぎたので、話を元に戻してもう一度整理する。新元号となった「248」番目の「令和」は、全20巻からなる万葉集巻五にある梅花歌三十二首の序に由来し、序に続く「梅花歌三十二首」は4群×8首=32首で、円座で回し詠みされたという。これぞまさしく「32」次元の回転群SO(32)の象徴とも言える。万物の理論における対称群の一つがSO(32)群であり、同じ次元数の別の対称群がE8×E8群を構成するE8群の次元数が「248」であり、新元号の序数と同じである。

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元号漢字73文字の使用回数

    (https://www.asahi.com/articles/ASM415R8GM41UHBI02H.html より)

 

あと1ヶ月で、新元号「令和」…どうか素敵な時代となりますように。