空・殻・核 (くうからかく)

クロノスとカイロスの狭間を転がる

11.太陽系の各惑星の自転・公転・会合周期、まずは水星から

地球と太陽と月のみならず、古くから太陽系の惑星たちは夜や宵や明け方の空に人間たちの目に触れ、ごく自然に絵画や小説、随筆などの中に登場し、私たちの意識に深く浸透していたりする。天動説の時代は、太陽と月も惑星の仲間であり、近代に入るまでは、惑星は天球上で地球の周りを回る日数の少ない順から、月・水星・金星・太陽(日)・火星・木星土星の七惑星だった。近代になって、地動説が提唱されるとともに、ティティウス・ボーデの法則から始まって、土星より外に天王星海王星冥王星が発見されたが、2006年国際天文学連合(IAU)総会で冥王星は惑星の座から降格して「準惑星」に分類されるようになった。したがって、2019年現時点での太陽系の惑星は、水星・金星・地球・火星・木星土星天王星海王星の八惑星である。古代から考えると、「七転び八起き」ならぬ、七惑星から八惑星への変化だ。

 

さて、惑星の運動と言えば「回転」がキーワードであり、時間的に言えば元の位置に戻ってくると「周期」というものがある。その中で特に大事なものが、自転周期・公転周期・会合周期の3つだ。自転周期は、天体自身が固定軸(自転軸)の周りを1回転する(「自転」という)のに要する時間のことであり、公転周期は、ある天体がある天体の回りを周回運動する(「公転する」という)時の1回転に要する時間のことである。自分でエネルギーを燃焼して輝く天体のことを「恒星」と呼び、太陽は恒星の一種だ。大雑把に言えば、その恒星の周りを公転するのが「惑星」であり、その惑星の周りを公転するのが「衛星」である。ただし、長い間「惑星」というものには、定量的な明確な定義や基準がなく、ざっくりと決まっていた感じだ。長い間の歴史において、小惑星・彗星といった惑星に割り当てにくいような微妙な天体が発見されていくうちに、惑星の基準を明確にする要求というものが次第にエスカレートし、クローズアップされ、ついに冥王星準惑星降格といった出来事も生じたわけだ。自転周期・公転周期以外に、2つの天体がある天体の周りを公転するとき、角度的に同じ位置に来る(「会合する」という)周期というものがあるが、これを「会合周期」と呼ぶ。会合周期については、以下のような明確な計算方法がある。

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2つの惑星間の会合周期および月の朔望月周期の計算の仕方

月の満ち欠けの周期、朔望月周期もこの会合周期に準じており、月を、太陽に対する地球の公転の内側を公転する惑星のように見立てた場合の、月と地球の会合周期に相当するものが「月の朔望月周期」になる。

 

言ってみれば、自転が自分軸のまわりだけを運動するという意味で「一人称」的であるとするなら、公転は恒星を中心においてその周りを巡るという意味で「二人称」であり、会合は恒星を中心においてその周りを巡る2つの天体同士が再び同じ位置で出逢うという意味で「三人称」と言っていいように思う。そういう意味では、自転が一人称、公転が二人称。会合が三人称という物言いはまんざらでもない気がする。

 

なお、太陽系の各惑星および代表的な準惑星の自転・公転周期と衛星や環の個数は、2019年2月20日現在では以下の表の通りである。

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太陽系の各惑星および代表的な準惑星の自転・公転周期と衛星や環の個数

次に、太陽系の内惑星群、すなわち、水星・金星・地球・火星の4惑星、および、外惑星群、すなわち、木星土星天王星海王星の4惑星の間の会合周期について少し計算してみましょう。

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各惑星同士の会合周期(1)(主に内惑星)

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各惑星同士の会合周期(2)(主に外惑星)

ここで、各惑星の大きさや、太陽からの距離だとかそういった惑星の空間的な側面ではなく、各惑星の自転周期・公転周期および惑星間の会合周期といった惑星の時間的側面を、ある意味、仮想空間上の距離のように見立てて、次のように考えてみる。まずは、仮想空間上の距離の単位ベースとして、「朔望月周期」(地球から見た月の満ち欠けの周期)29.5(日)をrとして採用することにする。rを直径とする円を考えると、この円周の長さπrは大体「水星の公転周期」(約88日)に等しい。この円の半径の2倍の円の円周の長さは2πrだが、円周の長さπrの円を、円周の長さ2πrの円の円周に内接するようにしながら転がすと、円周の長さ2πrの円の半周分で円周の長さπrの円は1回転し、その軌跡(内サイクロイド)はちょうど円周の長さ2πrの円の直径2rになる。この2rは大体「水星の自転周期」(約58日)に等しく、2πrは大体「水星の1日」(太陽が水星の空を一回りする時間=約176日)に等しくなる。さらに、円周の長さπrの円を、円周の長さ2πrの円の円周に内接するようにしながら転がし続けると、その軌跡は円周の長さ2πrの円の直径の往復分となり、その距離は4rとなる。この4rは大体「水星と地球の公転周期」(約116日)に等しい。以上で、水星に関する主な周期は出揃ったが、月の朔望月周期を単位として仮想上の円に内接する半分の半径の内サイクロイドに関連する数値として表われたことになる。

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朔望月周期と水星の各周期との関係