空・殻・核 (くうからかく)

クロノスとカイロスの狭間を転がる

13.惑星の公転軌道と原子核のプラトン立体モデル

前々回、前回と、太陽系の惑星について、通常の天文学的な観点からのアプローチではなく、自転周期・公転周期・会合周期といった時間的データを空間化した幾何学にも似たアプローチで、眺めてみた。こうした手法は、科学的ではないかもしれないが、惑星が私たち人間の意識に与える影響等を、別の角度から捉え直してみるという意味では面白いアプローチだとは思っている。

 

ここから少し発展させて、今回は、近代科学の先駆的存在であるドイツの天文学者ヨハネス・ケプラーが自著『宇宙の神秘』(1596)の中で説明している「惑星の公転軌道のプラトン立体モデル」とも言うべきものと、アメリカのシカゴ大学教授ロバート・ムーンが提唱した「原子核構造のプラトン立体モデル」とも言うべきものを紹介して、これをうまく接続したいと思う。

 

まず、私たちに馴染みの3次元空間において、すべての面が同一の正多角形で構成され、かつ、すべての頂点において接する面の数が等しい凸多面体を「正多面体」と呼ぶが、この正多面体は、正四面体、正六面体(立方体)、正八面体、正十二面体、正二十面体のたった5種類しかない。古くは古代ギリシアの哲学者でもあるプラトンはこの事実を既に知っていたと言われ、正多面体は「プラトン立体」とも呼ばれる。

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図13-1 プラトン立体

https://jhs-math.komaro.net/jhs01/kukanzukei/seitamentai/ より)

 

さて、ケプラーが唱えた「惑星の公転軌道のプラトン立体モデル」(以下、「惑星プラトン立体モデル」と略す)は、当時発見されていた水星・金星・地球・火星・木星土星という6個の惑星の公転軌道面に、正八面体、正二十面体、正十二面体、正四面体、正六面体を入れ子構造的に内接・外接させていくものであり、具体的に述べると、以下の通りである。なお、各惑星の公転軌道面は球面に見立てている。

 

まず、水星の公転軌道面に正八面体を外接させる。この正八面体が金星の公転軌道面に内接されるように、正八面体の大きさを調整する。次に、金星の公転軌道面に正二十面体を外接させる。この正二十面体が地球の公転軌道面に内接されるように、正二十面体の大きさを調整する。続いて、地球の公転軌道面に正十二面体を外接させる。この正十二面体が火星の公転軌道面に内接されるように、正十二面体の大きさを調整する。同様に、火星の公転軌道面に正四面体を外接させる。この正四面体が木星の公転軌道面に内接されるように、正四面体の大きさを調整する。最後に、木星の公転軌道面に正六面体を外接させる。この正六面体が土星の公転軌道面に内接されるように、正六面体の大きさを調整する。

 

したがって、ケプラーの惑星プラトン立体モデルは、内側から順に、

 

水星→(正八面体)→金星→(正二十面体)→地球→(正十二面体)→火星→(正四面体)→木星→(正六面体)→土星

 

となっている。

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図13-2 ヨハネス・ケプラーの惑星プラトン立体モデル

ウィキペディアヨハネス・ケプラー」より)

 

このケプラーの惑星プラトン立体モデルにあやかって、ロバート・ムーンが唱えたのが「原子核構造のプラトン立体モデル」(以下、「原子核プラトン立体モデル」と略す)である。彼は、原子核を構成する陽子や中性子にも電子と同様に軌道を量子化するような構造があり、陽子の個数、中性子の個数、質量数(陽子の個数+中性子の個数)は原子核を安定させる「魔法数」(マジック・ナンバー)と関係が深いと考え、これを説明するために、ケプラーと同様、5種類のプラトン立体による入れ子構造を利用した。

 

ムーンは、ケプラーよりもっと単純に、正十二面体に内接するように正二十面体を設置し、次に、その正二十面体に内接するように正八面体を設置し、続いて、正八面体に内接するように正六面体を設置する。こうして、作ったプラトン立体の入れ子構造の頂点が、ある種の特異点のようになっていて、そこに陽子が格納されるようなイメージである。したがって、一番内側の正六面体の頂点8個が埋まれば、原子番号8(陽子数8個)の酸素原子になり、次の正八面体の頂点6個まで埋まれば、8+6=14で、原子番号14(陽子数14個)のケイ素(シリコン)原子になる。続いて、正二十面体の頂点12個まで埋まれば、8+6+12=26で、原子番号26(陽子数26個)の鉄原子になり、最後の正十二面体の頂点20個まで埋まれば、8+6+12+20=46で、原子番号46(陽子数46個)のパラジウム原子になる。

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図13-3 ロバート・ムーンの原子核プラトン立体モデル

ロバート・ベイカー他『謎の科学30理論』(1998)より)

 

ところが、このモデルだと、自然界に存在する元素である原子番号92(陽子数92個)のウラン原子まで説明できない。そこで、ムーンは、この正六面体・正八面体・正二十面体・正十二面体という入れ子構造をもう一組用意した。実際、原子番号47(陽子数47個)の銀以上だと、陽子1個につき、10億ボルト以上の非常に高いエネルギーを与えると、ほぼ同じ大きさの二つの部分に分裂するそうだ。パラジウム以下の元素ではこのようなことは生じないという(ロバート。ベイカー他『謎の科学30理論』参照)。詳細は省くが、ムーンは、この2つの入れ子構造を用いて、原子番号92のウラン原子までの構成を説明する。

 

したがって、ムーンの原子核プラトン立体モデルでは、1組目の入れ子構造に対する元素の対応は、内側から順に、

 

水素(原子番号1)~酸素(原子番号8)=(正六面体)→窒素(原子番号7)~ケイ素(原子番号14)=(正八面体)→リン(原子番号15)~鉄(原子番号26)=(正二十面体)→コバルト(原子番号27)~パラジウム原子番号46)=(正十二面体)

 

となっている。

 

なお、ムーンの原子核プラトン立体モデルには、一見、5種類のプラトン立体のうち、正四面体が使われていないように見えるが、これは、実は最も内側の正六面体の内部構造として使われている。つまり、正六面体の頂点のうち、1個ずつ飛ばした4個の頂点を結んでできる立体が正四面体であることを用いて、ヘリウム原子核であるα粒子の構造などを説明している。

 

以上で、ケプラーの惑星プラトン立体モデルと、ムーンの原子核プラトン立体モデルの大雑把な構造の説明は終えるが、これを利用して、惑星の公転軌道の配置といったマクロ・レベルの自然界の構造と、原子核における陽子軌道の配置といったミクロ・レベルの自然界の構造を、よりダイレクトにうまく連携させることはできないものかと考えてみる。この発想の背景として、マクロ・レベルの自然界の周期的構造と、ミクロ・レベルの自然界の周期的構造が互いに連携し合って、人間の精神や意識、さらには、もっと高次元の精神や意識が生み出されているのではないか? あるいは、発想を逆転させて、高次元の精神や意識が存在するからこそ、マクロ・レベルの自然界の周期的構造や、ミクロ・レベルの自然界の周期的構造が形成され、それらが連携し合って、様々な現象が生じているのではないかというわけである。まあ、簡単に言ってしまえば、精神や意識がまるで球体のごとく転がっている、その途上の離散的な核構造としてプラトン立体が使えないだろうかという発想である。

 

古代ギリシアの哲学者プラトンは、ピタゴラスと同様に、数を調和の本質とし,宇宙を形成する元素を数の面から捉えた。具体的には、自著『ティマイオス』の中で、元素として、正四面体には「火」を、 正八面体には「空気」(風)を、正二十面体には「水」を、正六面体には「土」を対応させ、正十二面体には未知の第五の元素「エーテル」を対応させている。

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図13-4 プラトン立体と五大元素

プラトンティマイオス』より)

 

ここで、何かを思考するときの参考に、各プラトン立体の数値的特徴を以下に一覧として掲げておく。

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図13-5 プラトン立体の主な数値的特徴

これらを無意識的背景に控えて、改めて、惑星のマクロ・レベルでの精神的な構造体が、元素のミクロ・レベルでの物質的構造体へと向かって収縮していくのが、惑星と元素の対応関係であると考えてみよう。改めて、ケプラーの惑星プラトン立体モデルを図示しておく。

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図13-6 プラトン立体と惑星の公転軌道

次に、ケプラーの惑星プラトン立体モデルに、ムーンの原子核プラトン立体モデルに連携させて、元素対応を考えてみると、こんな感じになる。

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図13-7 プラトン立体と惑星および元素の対応のシュミレーション

言ってみれば、ロバート・ムーンが提唱したプラトン立体の入れ子構造の組をもう一組内部に抱え込むようにした上で、それがうまくケプラーの惑星プラトン立体モデルに重なり合うようにしている。こうすると、うまい具合に、外惑星(木星土星天王星海王星)の入れ子構造が、内惑星(水星・金星・地球・火星)の入れ子構造に射影変換されているようにも見え、その最も中核的なエネルギーがp-pチェーンとCNOサイクルを通して、太陽の内部で生み出されているようにも見える。

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図13-8 ケレスを含む小惑星帯による内惑星と外惑星の分割

(ジョン・マルティノー『星たちのダンス』より


言ってみれば、外惑星から内惑星への射影変換、もしくは、その逆変換の数値的な根拠として、木星土星天王星海王星の外惑星と、水星・金星・地球・火星の内惑星の平均公転軌道半径の間の関係として、

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図13-9 内惑星と外惑星の平均公転軌道半径の比の関係

という複比的な関係がある。この「平均公転軌道半径」の間の関係という空間(距離)的関係は、ケプラーの第3法則を用いて、「平均公転周期」の間の関係という時間的関係として見ることもできる。

 

【参考】ケプラーの惑星の運動の3法則(ウィキペディアケプラーの法則」より)

ケプラーの第1法則…「楕円軌道の法則

惑星は、太陽をひとつの焦点とする楕円軌道上を動く。

ケプラーの第2法則…「面積速度一定の法則

惑星と太陽とを結ぶ線分が単位時間に描く面積は、一定である(面積速度一定)。

ケプラーの第3法則…「調和の法則

惑星の公転周期の2乗は、軌道の長半径の3乗に比例する。

 

この辺のイメージを用いて、太陽系の惑星形成に、もう少し深い有機的な意味付けは行えないものだろうか。