空・殻・核 (くうからかく)

クロノスとカイロスの狭間を転がる

7.アポロニウスの円

人間はどうも無垢で公平であった大地を分断して、より自分が多くなるように領土化し、所有しようとする。その傾向は、自分以外の他者を出会ったときに特に顕著に表れるようだ。

 

例えば、あなたBとわたしCの間を結ぶように引かれた一本の線分があったとして、その両者の力関係の比がm:n(m>n)であったとしたら、その線分領域をm:nに分けようとするし、さらに、あなたとわたしの線分領域を超えた地点Dに自然に目が置かれたとしても、あなたとわたしの間の線分領域を超えた地点Dまでの領域の比BD:CDがm:n(m>n)になるように分けようとする。

 

このように、あなたとわたしの間の線分内の点で分けることを「内分する」といい、線分を超えた点で分けることを「外分する」という。

 

面白いことに、この内分する点と外分する点という2点を直径の両端とする円を描けば、それはあなたとわたしの線分領域をm:n(m>n)に分ける点全体の集合になる。これを幾何学的には「アポロニウスの円」という。

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アポロニウスの円

このアポロニウスの円に関しては、他にも面白い性質がある。線分BCをm:n(m>n)の比に分けるアポロニウスの円周上の任意の点Aを選べば、三角形△ABCの角Aに関して、内角A(∠BAC)の二等分線はBCをm:nに内分する点Dを通るし、外角A(∠CAE)の二等分線はBCをm:nに外分する点E(BCの延長線上にある)を通る。しかも、この比m:nというのが、実は点Aを含む他の二辺ABとACの比なのである。

 

言い換えれば、三角形のある頂点に対する内角の二等分線は対辺を残りの二辺の比で内分する点を通るし、外角の二等分線は対辺を残りの二辺で外分する点を通るということだ。

 

まるで、頂点Aは、人間の視点のようなもので、内角と外角の二等分線は、それぞれ自分の内面を見る内向きの視線、自分の外面を見る外向きの視線であり、頂点Aに対する対辺BCはスクリーンの働きを果たす視界平面のようなもので、ただそれが平面ではなく線分と化したものであり、それを左右の視界範囲のふちであるABとACの偏りの差異にる長さの違いによって、その長さの比を保ったまま、スクリーンである線分を、内面では内分比で、外面では外分比で分けているとは言えないだろうか。そう考えると、何だか意味深な感じだ。